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2017.01.18

【日々の出来事】2017年の片隅で

「興味があるようでしたら、読んでみませんか?」と言ってコミックにやたら詳しい制作部のU君が持ってきてくれた

『この世界の片隅に』(上・中・下巻 こうの史代著 双葉社)。

話題になっているアニメ映画の原作が読みたかったので、嬉しかったネー。

 

トップページは≪この世界のあちこちのわたしへ≫という印象的な1行のメッセージで始まっている。

どの視点で描くのかをしっかり伝えているところに作者の誠意と決意があると思った。

 

次の見開きページいっぱいに、主人公、浦野すずの少女時代の情景。

絵を描く事が大好きで、可愛くて、ヤンチャだけど芯の強い表情が圧倒的に素晴らしかった。

 

話は、主に昭和18年から20年にかけての広島・呉を舞台にしている。

降って湧いたような見合い話の末に、すずが広島から呉に嫁ぎ、北条すずとなって、

嫁ぎ先での慣習や周囲の人々に受け入れられるべく懸命に生きて行く中、

戦争はますます激しくなり、海軍施設の要だった呉は、何度となく激しい空襲を受け、

その爆撃で、姪っ子を死なせ、自らの右手を失う事になってしまう。

すずの実家がある広島は原爆で街ごと壊滅する。

 

そうした<戦争>の日々の暮らしの中でもキラメキ、切なさ、可笑しさ、悲しみがある。

兄・妹とのこと、嫁ぎ先の家族とのこと、夫,周作との暮らしぶりと葛藤、

ひょんな事から友達になった遊郭の女性リンとの友情、

リンと周作の過去の秘め事(映画でははぼ触れられていない)、

幼なじみで海軍将校となった水原への淡い感情の襞。

書いたらキリがないほど魅力的である。

 

アニメ映画と比べると、このあたりの細やかで微妙な表情、

言い回しなどは漫画のタッチの方が味わい深いと思う。

 

映画はキネマ旬報2016年トップテンで、「シンゴジラ」を押さえて1位。

映画製作に関するクラウドファンディングの責任者が

コピーライターの小霜和也さん(去年、当社のクリエイティブセミナーをしていただきました)の

『ここらで広告コピーの本当の話をします』に大きな影響を受けたという話もあって、

こちらも面白かった。(詳しくは『AdverTimes』2017.01.06掲載)

 

トランプ大統領のアメリカを筆頭に、きな臭さが漂ってきた2017年、

すずのように、この世界の片隅で僕らは、日々をしっかり地道に生きて行く事しかないのだというメッセージ。

最初の1行が沁みたなー。

 

(シゲ)

 

 

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